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概要
- 「ヤコブによる原福音書」の主人公は聖母マリアである。四福音書とは異なり、聖アンナによるマリアの誕生からヘロデ大王の幼児虐殺まで描かれている。
- 四福音書のように正典ではなく外典である。つまり記述の一部がキリスト教会によって異端と見なされた。
- 外典ではあるものの、聖母マリアの見方に大きな影響を与え、数々の宗教画に「ヤコブによる原福音書」の場面が描かれている (e.g. レオナルド・ダ・ヴィンチ「洞窟の聖母」)。
考察
- 聖母信仰は基本的に正典に依拠しない。プロテスタントもそれを指摘している。それがこれだけ人の心を打ったというのは、地母神から続く、人間による母に対する暗黙的な信仰があったのかもしれないが、「ヤコブによる原福音書」をはじめとした物語に共感できたためではないかと思う。
- キリストは聖母マリアから生まれる。キリストは原罪から解放されているなら、聖母マリアは?処女懐胎によって生まれたキリストに対する聖母マリアの気持ちは?正史はテキストである以上全ての行間を埋めている訳ではない。行間に疑問を持つ人が現れ、解釈が発生する。
- 仏教は解釈を許可しているためお経によっては明後日の方向に向かっている。キリスト教は基本的には解釈を許可していないものの、外典・偽典が生まれ市井に浸透していく場合もある。そしてこういった解釈の積み重ねが世界の歴史に影響を及ぼす場合もある。
- 現代の人々は二次創作を好む。二次創作も解釈の一つだと考えると、解釈という行為は今も昔も変わらない人間の営みなのではないかと思う。